患者様に寄り添う医療の提供~スペシャルジェネラリストを目指して~
直接患者様と接する機会は少ないですが、患者様に適切な治療を提供するための検査を担っている臨床検査技師について紹介いたします。
なお、本ページは、医療センターニュース令和3年度(2021年度)秋号の特集/中央検査部を再構成したものです。
【インタビュー・撮影 令和3年8月27日(金)】
県立病院ならではの検査業務の特徴
公立病院の役割として、社会を脅かす事故や病気あるいは自然災害の発生時には、他の医療機関に先駆けていち早い対応が求められます。
当院は救命救急センター、周産期母子センターを併設し、地域医療支援病院、エイズ治療拠点病院、感染症指定医療機関病院、基幹災害拠点病院でもあるため、それぞれの使命から、検査部に求められる検査は多種多様になります。そしていかなる時も、迅速で正確な検査結果を提供し、緊急時にも適切な医療を皆様に受けていただけるように努力しています。
技師長
坂下 文康
コロナ禍においての検査
新型コロナウイルスの蔓延前と現在を比べると、検査件数に多少の変化が見られます。新型コロナウイルスに対応するために昨年(2020年)8月より抗原定性検査を始め、現在は抗原定量検査とPCR検査を24時間対応で行っていることにより、検査件数が増加したと考えます。
目指す検査技師像
スペシャリストとジェネラリストという言葉があります。スペシャリストとは専門家を意味します。
私たち臨床検査技師は臨床検査のスペシャリストであると自負しております。
しかしながら、臨床検査には様々な分野があり、それぞれの分野において資格(細胞検査士や認定輸血検査技師、感染制御認定臨床微生物検査技師など)があります。各分野の専門的な知識と技術を身につけ、さらなる資格を得てスペシャリストになることが、精度の高い検査の実施につながります。
また、ジェネラリストとは全体を把握して、実行動に活かすことができる人を意味していると思います。臨床検査技師には、多岐にわたる検査の全体を見渡し、患者様から得られた様々な検査データをより迅速かつ正確に医師等に提供することで、チーム医療に貢献していく使命があると考えます。
つまり、私が考える検査技師像とは、『ジェネラリストであり、かつスペシャリストである』ということになります。その実現のために、日々の努力を惜しまず、患者様に寄り添って、迅速で正確な検査結果を提供できるように引き続き尽力して参ります。
現在の課題
医療の進歩とともに検査も変化し続けています。近年では、遺伝子情報を利用、応用した検査も増え、専門性の向上が求められています。この変化に柔軟に対応していくことが今後の課題と考えます。
検査の一覧
検体検査
血液や尿、その他穿刺液(胸水や腹水等)に含まれている成分や細胞形態を調べる検査。生化学検査、免疫血清検査、薬物濃度検査、血液検査、輸血検査、一般検査など。
生理検査
脳波などの脳神経系の検査、肺活量などの呼吸器系の検査、心電図などの循環器系の検査があり、臨床検査技師が様々な検査機器を用い、直接患者様に触れて、身体の生理現象を波形や画像として記録します。
細菌検査
感染症(食中毒、髄膜炎、肺炎など)の疑いがある患者様の検体(喀痰、尿、便、血液、髄液、膿など)から原因となる細菌を見つけ、どの薬(抗生物質)が効くのかを調べる検査。またインフルエンザウイルスなどのウイルス迅速検査や、遺伝子を利用した感染症の原因菌を調べる検査。
病理検査
手術材料などの病理組織検査、細胞診検査、術中迅速検査があり、その他病理解剖も行います。
検体検査(血液)の流れ
- エアシューターによって採血室や各病棟から速やかに検体が届きます。
- 検体の情報をコンピューターに取り込み、機械を通して検査を進めます。
生化学検査、免疫血清検査など。 - 分析した数値のチェックを行い、医師へ報告するデータ資料を作成します。
異常な数値が出た場合でも、薬の副作用など理由が明らかな場合もあれば、病気を発症している場合、または機械の故障の可能性はないかなど、一人一人のカルテを見ながら数値の確認を行います。
災害時でも、必要な検査ができるように手動で検査を行うためのマニュアルや試薬、また通常よりも少ない水で検査が行える機械なども用意しています。
輸血が必要な時は、輸血検査を行い患者様に適合する血液製剤を調べます。24時間体制で対応し、安全かつ迅速な輸血を提供します。
ギモン
Q. 血液検査では、なぜ何本分も血液を採取されるの?
A. 検査項目によって、検査の処理が異なるため複数採取をしています。
Q. 1日どれくらいの検査をしているの?
A. 約350〜500本、多い時は600本もの検体を検査しています。
若手臨床検査技師 インタビュー
さまざまな部署が支え合い、連携して患者様の治療にあたっています。
臨床検査技師 前田 隆平 (当院:6年目)
臨床検査技師を目指したきっかけ
実は高校生までは“部活動のために学校に行っていた”と言っても良いくらい、部活動に明け暮れていました。引退後、いざ進路を決めようと考えていた際、新聞で「顕微鏡でがんを見つける」というニュースをたまたま見かけて、かっこいいと思ったのがきっかけです。
三重県立総合医療センターに入社した理由
部活動でバレーボールをしていたのですが、大学生のときに友人から当院のバレーボールクラブに誘われ、自分もさせてもらいました。そこで交流したスタッフの方々に憧れて、三重県立総合医療センターを就職先として選びました。当時は、就職についてのアドバイスなどもいただき、とても助かりました。
やりがいを感じる瞬間は?
「細胞検査士」という資格を取得したことは、やはり大きな成長だと感じています。経験年数も浅く、諸先輩方と比べるとまだまだできていないこともあると思うのですが、経験を積んで自分の責任をしっかりと全うしていきたいです。
※細胞検査士…細胞診により正常な細胞から、がん細胞を見つけ出す仕事。
今後の目標や夢
資格はとりましたが、さらに腕を磨いて、先輩達に追いつきたいです。学会発表や論文なども興味があるので、今後はそういったことにも取り組みたいです。
臨床検査技師 泉原 準也 (当院:3年目)
臨床検査技師を目指したきっかけ
家族が看護師をしており医療職は身近に感じていました。自分は野球をしていたこともあり、身体に直接関われるリハビリ職に関心を持っていました。しかし、「臨床検査技師の方が、性格に向いていると思う」と勧められ、自分のことを理解してくれる家族の一言でやってみようかなと思い、目指したのがきっかけです。
三重県立総合医療センターに入社した理由
以前は愛知県の病院で臨床検査技師として勤務していました。結婚を機に転居することになり、新たな職場を探していたところ、知人が三重県立総合医療センターで働いていたことがきっかけです。病院によって同じ検査でも方法は異なるので、いろんな経験をさせてもらっていてありがたいです。
やりがいを感じる瞬間は?
元々は仕事としてどんなことをするのか理解せずに目指していたので、たくさんの人と出会い、いろんなことを教えていただくことですごく刺激を受けています。臨床検査技師として、何ができるのか、何が必要なのか、これからも考え続けていきたいです。
今後の目標や夢
現場に入ってからは、意識が大きく変わりました。医療従事者の仕事は、患者様がいることから始まります。患者様のことを第一に考えて、検査という仕事に向き合いたいと思っています。