診療科のご案内

心臓血管外科

心臓血管外科の診療内容

 心臓とは人の胸の中にあり、収縮と拡張を規則正しく行うことで、血液を全身に送り続けている臓器です。心臓から送り出される血液によって、全身の臓器は酸素や栄養分を受け取ることができるのです。心臓から送り出される血液は酸素を十分含んだ血液(動脈血)で、動脈を通って全身の臓器に送られ、全身の細胞を養います。役目の終わった血液は静脈血として静脈を通って心臓に戻ってきます。血液にとって動脈は往き道、静脈は帰り道となります。心臓は、この血液を全身に送るために規則正しく、常に休むことなく動き続けます。1分間に約60-80回、1日におよそ10万回、1年では約4000万回、一生には約30億回も収縮と拡張を繰り返し、全身に血液を送り続けます。心臓は一回の収縮で約70ミリリットルの血液をおくりますので、一分間で約5リットル、一日で約7000リットルの血液を全身に送り続ける事になります。人が生まれてから、心臓は休むことなく血液を送り続け、血液の通り道である動脈と静脈は、この血液の流れを受け止め続けるわけです。この心臓と血管を含めて血液を全身に送る体のシステムを総称して「循環器」と言います。この様に常時大変な仕事をしている心臓と血管「循環器」ですので、機能障害が起こらない事のほうがむしろ不思議な事とさえ言えます。

 最近よく耳にする「メタボリックシンドローム」と言う言葉をご存じの方は多いのではないかと思います。それは動脈硬化性疾患の危険性を高めるリスク症候群で、内臓脂肪蓄積に加え、脂質代謝異常(高脂血症)、高血圧、高血糖(糖尿病)を伴う病態です。いわゆる「生活習慣病」でもあり、主に生活習慣や環境・体質などによって症状もなく徐々に進んでいき、「動脈硬化」という血管の病気を通して、心臓や血管、すなわち循環器の大変な病気を引きおこしてしまいます。循環器は、人間のすべての臓器を養っている大切なシステムですので、循環器系に障害が出ることで、心臓だけでなく他の臓器例えば、脳や腎臓といった全身のあらゆる臓器の病気も引き起こしてしまう事も大きな問題とされています。循環器疾患は実に多様性に富んでおり、内科的治療のみでは対応できない病気も多い事がわかってきています。私たち、心臓血管外科ではその名の通り、心臓と血管の機能障害を外科的に治療することを専門としております。

 私たちの心臓血管外科は、三重県立総合医療センターが開設された1994年10月に発足しました。循環器病の全身状態に最大限の配慮をした「体に優しい外科治療」をモットーに治療に当たっています。手術そのものが体に与える負担を医学用語で「手術侵襲」といいますが、私たちはこの手術侵襲を最小限に抑えた「低侵襲心臓手術」に取り組み、心臓から全身の血管(脳血管は除きます)まで広い範囲で診療を行っています。

 病気に対する戦いは、病気に対する正しい理解から始まります。「心臓・血管がおかしいかな」と気になる方は、是非お気軽に当科までご相談ください。電子メールでのご相談や、いわゆるセカンドオピニオンに関したご相談にもお答えします。心臓血管外科・近藤宛で、当院に電子メールをお願いします、アドレスはsogohos@gmc-mie.jpです。
私たち心臓血管外科は機能を再建する外科で、術前より良い状態にすることを目的として取り組んでおります。高い安全性と洗練された質の高い心臓血管外科治療を推し進め、皆様の日常生活のレベルアップに貢献できるように努力いたしますので、お気軽にご相談下さい。

 私たち心臓血管外科は機能を再建する外科で、術前より良い状態にすることを目的として取り組んでおります。高い安全性と洗練された質の高い心臓血管外科治療を推し進め、皆様の日常生活のレベルアップに貢献できるように努力いたしますので、お気軽にご相談下さい。

体に優しい心臓手術

 従来の心臓手術といえば、人工心肺装置(人工の肺で血液を酸素化し、心臓の代わりのポンプで血液を全身に送り出す装置)を用いて、心臓を止めて行なうため、体や心臓に負担の大きい大変な手術というのが常識でした。心臓に病気を持っている人は、心臓をはじめ全身の臓器に機能障害をもっている事が多く、患者さん本人にとってはますます負担と危険性の高いいわゆる「命がけの手術」となっていました。

 当施設では、冠動脈バイパス手術におきましては、人工心肺装置を使わず心臓も止めずに行う「体に優しい低侵襲心臓手術=オフポンプ手術」に2002年から取り組んできました。ご高齢のかたや脳梗塞・腎不全・糖尿病といった全身臓器の障害を持った患者さんにとっては特に有用な手術法です。

冠動脈バイパス手術について

 心臓を養っている冠動脈という血管が動脈硬化で細く狭くなると、十分な血液が心臓に行き届かなくなり、狭心症という病気を引き起こします。さらに冠動脈が詰まると心臓の筋肉が腐ってしまう心筋梗塞という病気を引き起こします。冠動脈バイパス手術は、この冠動脈が細く狭くなったり詰まったりした部位を飛び越えて、血液の新しい通り道をつける手術のことです。古くて痛んだ狭い道路はそのままにして、新しくバイパス道路を建設して、交通の便が良くなることと同じと考えていただければご理解いただけると思います。狭心症や心筋梗塞の患者さんに対して行う手術で、心臓の手術では最も多く行われている手術です。日本では年間に約16000人の人に行われています。

 従来、心臓手術は人工の心臓や肺である人工心肺装置を使って、心臓を止めて行うのが常識でした。一方2000年頃より、心臓の表面の冠動脈に行うバイパス手術では、体に対する負担を軽減し安全性を向上させるため、人工心肺装置を使わず心臓も止めずに行う「心拍動下低侵襲冠動脈バイパス手術」が新しい手術法として登場してきました。人工心肺装置(ポンプ)を用いないためオフポンプ手術とも言います。この手術は「体にやさしく安全性が高い」と言う大きなメリットがある一方で、心臓を止めずに動かしたまま手術を行うため、質の高い結果を得るためには、高い手術スキルはもちろんのこと、麻酔を含め洗練された手術環境・チームワークが必要です。当科では2002年からこの「オフポンプ冠動脈バイパス」に取り組み、多くの実績をあげてきました。

 当科では冠動脈バイパス術にはオフポンプ手術による完全血行再建を第一選択としております。体外循環を用いず、心臓も止めないため、手術による身体への負担が軽く、脳血管障害、呼吸機能障害、腎機能障害などの合併症を有する患者さんや、高齢者でも、より安全に術後合併症を起こすことなく手術が可能となっております。最近では手術適応患者さんの高齢化もあり、大動脈~頭頸部動脈の動脈硬化の強い患者さんが増え、術中脳梗塞合併の危険性が高くなっておりますが、オフポンプ手術を第一選択とした2002年6月から現在まで、術中脳梗塞はゼロを維持しております。また、自己血輸血(詳細は後述)のみで手術可能で、手術翌日から食事もでき、入院期間も短くなりました。2015年2月までで、緊急手術も含めた全単独冠動脈バイパス術患者さんの95.4%で、待機手術では98.8%でオフポンプにて手術を行っております。

 バイパスに用いるグラフトは、遠隔成績が良好である(長持ちする)内胸動脈を主に、多くの患者様に動脈グラフトを用いております。何らかの理由で動脈グラフトが用いられない場合は静脈グラフトを用いております。しかし最近では重症例が多く(年々増加傾向にありますが)、静脈グラフトを用いる場合も増加しているのが現状です。

心臓弁膜症の手術について

 心臓は4つの部屋、左心房・左心室・右心房・右心室を持っています。左右の心室は血液を勢いよく送り出すために、入口と出口には弁と呼ばれるものがついており、血液の流れが一方向に進み、戻ってこないようにする働きがあります。この弁の機能に障害を来した状態を弁膜症といいます。具体的には弁がきちんと閉まらなくて、血液が逆流してしまう「閉鎖不全症」と、弁の開きが悪くなり血液の通りが悪くなる「狭窄症」があります。中でも全身に血液を送り出す左心室の入口と出口にある弁、それぞれ僧帽弁、大動脈弁と言いますが、これらの機能障害がひどくなった場合には手術が必要となります。この弁膜症に対して、私たちは、弁病変の形や心臓の機能・患者さんの状態に応じて、一人一人の患者さんに最も適切な手術法を選択し提供いたします。

 僧帽弁疾患では、自己弁を温存する形成術を第一選択とし、さらに心房細動を有する患者さんでは、積極的に不整脈手術(MAZE手術)を追加し、抗凝固不要を目指しております。そして飲み薬をできる限り少なくし、手術後の生活のレベルアップを図っています。

 大動脈弁疾患では、人工弁置換術が基本となります。術後抗凝固が不要な生体弁を用いるか、半永久的な耐久の機械弁を用いるかは、患者さんの年齢、合併疾患の有無等を考慮し、患者さんと相談の上決定しております。

大動脈疾患の手術について

 大動脈とは全身へ血液を送る最も太い動脈です。心臓から出て頭の方へ向かい、胸の上部でUターンして胸の中を下半身へ向かって走行します。そして、横隔膜を貫通しお腹にはいり、お臍(へそ)の下あたりで左右の脚(あし)に向かうように分岐します。
手術が必要になる大動脈の病気の中で、最も多いのが大動脈瘤です。大動脈瘤とは読んで字の如く大動脈が「瘤(こぶ)」状に徐々に膨らむ病気です。これは、動脈硬化+高血圧症が主な原因です。動脈硬化を促進する因子=高血圧症、糖尿病、高脂血症(高コレステロール血症)、喫煙、肥満等をお持ちの方は、持っていない人に比べ、大動脈瘤になる危険性が高くなります。

 多くは無症状で、いつの間にか大きくなり、他の疾患の精査で偶然発見されることが多いです。腹部大動脈瘤の場合は、お腹を触った時に、偶然に脈を打っている腫瘤として発見されることもあります。なかには、ご自身で拍動する腫瘤として自覚していても、痛くも何ともないので放置していて、たまたま医師に相談して発見されるというケースもあります。
また、肥満の方(お腹がぽっちゃりしている方)では大きくなっていても、触診で全く拍動がわからないことも多いです。胸部大動脈瘤は外から触ってわかることはありません。

 大動脈瘤が破裂するような大きさになるのには数年以上かかりますが、症状が出ないため見つかりにくいという難点があります。つまり、破裂しない限りはっきりとした症状は認めません。しかし、一旦、破裂すると痛みと同時に体内に大出血を起こすため、出血性ショックとなります。破裂した場合は、救急車で病院にたどり着く前に絶命する可能性が高い病気です。

 手術は大動脈瘤を切除し人工血管に置き換える(置換する)人工血管置換術が一般的で確実です。最近では大動脈瘤のある部位の大動脈内にカテーテルを用いてステントグラフトというパイプを留置し、膨らんだ部位への血流を遮断して破裂を防ぐ治療法もあります。しかし、大動脈瘤の位置や形態で適応される症例は限られます。また腹部大動脈瘤では手術自体が危険と考えられる高齢者や重い合併疾患のある方が基本的な適応となります。確実で耐久性に優れているのは手術による人工血管置換です。尚、現時点ではステント治療は限られた施設でしか行えず、当院では行えませんので、適応症例は関連施設へ紹介しております。

 動脈硬化が原因で起こる大動脈瘤症例では、全身の他の動脈にも病変がある場合が少なくありません。脳梗塞の原因となる脳動脈硬化症・頸動脈狭窄症、心臓を養う冠動脈の硬化が原因の心筋梗塞・狭心症、下肢の血行障害となる閉塞性動脈硬化症などを合併します。当院では大動脈瘤の待機手術の患者様全例に、上記合併疾患の有無とその治療の必要性を評価し、安全な手術治療が行えるようにしております。実際、胸部大動脈瘤手術と冠動脈バイパス術を同時に行った患者さんや、冠動脈バイパス術を行ってから腹部大動脈瘤の手術や下肢の血行再建術を行った患者さんも多数おみえです。

 急性大動脈解離や大動脈瘤破裂では、救命には手術治療が不可避であり、可能な限り緊急対応しております。

末梢動脈疾患の手術について

 下肢の血行障害に対する手術を行っています。最も多い病気は、両脚へ血液を送る動脈が動脈硬化で徐々に狭くなり、ひどい場合は詰まってしまい、下肢への血流が不十分になる病気で、閉塞性動脈硬化症と言います。足が冷える、歩くとふくらはぎが張って痛くなり、休まないと歩けないという症状(間欠性跛行と言います)が典型的です。さらにひどくなると足先が壊死に陥る場合もあります。喫煙は症状を悪化させる大きな要因で、まずは禁煙することが重要です。

 手術は血行再建術で、自家静脈グラフトまたは人工血管を用いてのバイパス術を行います。血行障害がなくなると、足は温かくなり、歩行障害もなくなります。

静脈疾患(下肢静脈瘤)

 静脈は体の端から心臓に血液が戻る帰り道です。人が立った状態では、下肢の静脈血は重力に反して上へ上へと流れなければなりません。そのため静脈には逆流しないように弁が付いていますが、この弁が壊れてしまい、静脈血がうっ滞して下肢の静脈が腫れる病気を下肢静脈瘤と言います。特に立ち仕事をしている方では、時間が経つにつれ(夕方になると)脚がだるくなり、むくみがひどくなり、痛みを伴うこともあります。ひどい場合はうっ血により足首近くに色素沈着や潰瘍形成を来たす場合もあります。

 軽症の場合は弾力ストッキング着用をお勧めしております。当科外来では脚のサイズ(太さ)を測定し、ストッキングの適切なサイズの指導をしております。

 中等症以上の方や見た目が軽症の方でも症状が強い方は外科治療を勧めております。女性の場合、美容的な観点から治療を希望される場合もあります。

 いわゆる手術は原因となる静脈の抜去術が基本術式でありましたが、レーザー焼灼術が健康保険適応となり、現在はレーザー治療が主流となってきております。同治療では局所麻酔による日帰り治療も可能となりました。しかし、残念ながら当院では専用のレーザー治療機器がありませんので、関連施設に紹介させていただいております。

無輸血手術について

 予定手術の場合、患者さん自身の血液を前もって採取して病院内に貯めておき、手術の時の輸血は自分の血液でまかなうという「自己血輸血」を積極的に行っております。この自己血輸血は、他人の血液を輸血することに伴う合併症や副作用を防ぐ意味で、非常に有効な輸血方法です。冠動脈バイパス術や弁膜症の手術では原則として800mlの自己血を貯めて手術に臨み、その結果、他の人からの輸血を受けることなく退院していただいております。現在、自己血を前もって採取可能であった患者様の多くの方で、自己血輸血のみで経過しております。


 以上、私たち心臓血管外科は、機能を再建する外科で、術前より良い状態にすることを目的として取り組んでおります。地域の皆様の日常生活のレベルアップに貢献できるように努力いたしますので、お気軽にご相談下さい。

スタッフ紹介

近藤 智昭(科部長兼医長)/コンドウ チアキ

・昭和62年医学部卒業
・日本外科学会指導医・専門医
・日本胸部外科学会指導医
・心臓血管外科専門医、心臓血管外科学会国際会員
・心臓血管外科修練指導者
・臨床研修指導医
・三重大学医学部臨床教授・医学博士

鈴木 仁之(科部長兼医長兼北勢呼吸器センター副センター長)/スズキ ヒトシ

・昭和63年医学部卒業
・日本外科学会指導医・専門医
・日本胸部外科学会指導医
・呼吸器外科専門医、呼吸器外科学会評議員
・心臓血管外科専門医
・心臓血管外科修練指導者
・臨床研修指導医
・三重大学医学部臨床教授・医学博士

庄村 心(医長)/ショウムラ シン

・平成14年医学部卒業
・日本外科学会専門医
・呼吸器外科専門医

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